出会い
会社の帰りに東京新宿のある有名中古カメラ店の前を通ったらPENTAX67の初期型がかなり安い値段で出ていました。「これは買い」と即ゲット、もちろん105mm標準レンズ付きでした。(105mm標準はレンズバルサムのはがれているものが時々あるとのことでしたがこれはセーフ)
そうなるとこのカメラ用の広角レンズが欲しくなって頻繁にあのカメラ屋さんの前に足を運んでいたらあるとき35mm・F4.5が登場。このレンズ、星野写真家には垂涎の一品。値段もリーズナブルで、何も考えずにこれまた即ゲット。
早速、『ポタ赤』に同架して撮影した写真は今までに見たこともないほどシャープな星像で大満足でした。
「でも待てよ…。67で対角魚眼ならば4×5で全周魚眼カメラだよね」というわけで4×5カメラを作ることにしました。
せっかく作るならばちょっと高級感のあるものが…。だって貧弱なボディーじゃPENTAX35mm・F4.5に申し訳ないじゃないですか…という訳で、かなり気合を入れて製作した自作4×5判カメラをご紹介いたします。
カメラの構造
カメラの構造はとてもオーソドックスなものです。製作を容易にして、なおかつ精度を確保するために金属板と木材を併用することにしました。カメラの前面と後面は平面の精度を出したかったのでアルミ板を用い、カメラの焦点面までの距離を稼ぐ側板は寸法の調整がしやすい(削りやすい)ラワン材で構成しています。露の可能性のある夜間の撮影では胴体側板の木材の膨張も心配でしたが、これについては木材部分をアクリルラッカーで塗装することで対応することにしました。
前面のアルミ板の周囲に適当な穴をあけて木ねじで側板に止めてしまっても良かったのですが、ここは高級感を出すためにアルミのLチャネル材で周囲に飾りモールを付けています。裏面についても前面とほぼ同じ構造です。
カメラ上部には木製の取っ手を付けて持ち運び時の取り扱いやすさに配慮しましたが、これもまた高級感を醸し出すアクセントになりました。
カメラを製作するときにいつでも迷ってしまうレンズマウントの構造にはPENTAX製の67→645変換アダプタをバラして必要部分だけを流用することにしました。もしかしたら3個組のステップリングの方が良かったかもしれません。取り付けはアルミプレート側に2.5mmねじのタップを立てて3本で固定しましたが、強度的な心配は全くありません。
フィルムホルダーを固定するフランジはアルミバックプレートにコの字型のアルミチャネルをねじ止めしてスライド式固定治具を作りました。レンズとフィルム面の距離を正しく保てるようにフランジに取り付けた4本の加圧ねじでフィルムホルダーを固定します。これで外見は4×5カメラらしくなりました。
ところでレンズマウントのフランジからフィルムまでの距離 (フランジバック) を正確に製作しなければカメラとは言えません。参考にするのは『ペンタックス67』カメラそのものです。ダイヤルケージをアルミ角材に取り付けた簡易型の平面計を製作して測定した結果、だいたい85.5mm程度であることが判りました。許容誤差は0.1mm程度は許されそうです。
そこで4×5カメラを組み立てて測定、バラしてレンズ側のアルミプレートと当たるラワン材をサンドペーパーで削ってまた組み立てて測定、・・・、これを繰り返してほぼ目的とするフランジバックの距離に調整しました。製作したカメラのフランジバックを測定した結果を示しましたが、概ねPENTAX67と同じくらいの寸法精度に納めることが出来ましたのでカメラレンズに刻まれた距離を無限大に合わせるだけで基本的にはピントが合うようになりました。
そして、カメラの内部はスポンジ状のネオプレンゴムシート(DIT店で入手可能)を貼り付けてつや消し加工処理としました。
このゴムプレートは表面がザラザラで反射がほとんど発生しません。そのために優れた迷光防止能力を発揮してくれそうです。迷光の発生しない様子は中央の写真から良くわかるのではないでしょうか。
ピント合わせの方法
撮影する場合の構図決めには10×10mmのアクリル棒で枠を組んだ中にサンドペーパーですりガラス状にしたアクリル板を組み込んだピントプレートをフィルムホルダーの替わりにフィルムフランジに取り付けて視野の確認を行います。このプレート上でピントチェックルーペを用いてピントの状態を確認できます。
しかし、さらに精度良くピント合わせをするために実際のフィルムホルダーのフィルムプレートに穴あけ加工を施し、すりガラス状の擬似フィルムを装着したピント確認用ホルダーを用意しました。
このホルダー、黒色のアルミ版にあけた多数の穴を通してフィルム面のピント状態を写真用のルーペで確認します。確認できる範囲は狭いものの、実際のフィルム面でのピント確認ができるので大変な安心感が得られます。
さてその結果は?
写真はこのカメラの製作のきっかけとなったPENTAX35mm・F4.5を装着した自作4×5判カメラです。4×5判カメラとしては比較的小さな寸法で製作できたと思います。
このカメラは自作の『ホータブル赤道儀』に載せて2001年の『しし群』の時に活躍してくれました。ただ、ちょっと恥ずかしいことにセット後に極軸をずらしてしまって・・・写真、出せません・・・。
ごめんなさい。そのうちアップしますね。
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