2004/09/25
仮鏡筒のドブソニアンとして完成したFS-200は660倍でもシャープな像の得られる20cm・F10のニュートン反射です。でも、ドブソニアンでは恒星時追尾ができないのでせっかくの高倍率可能な光学系も『眼視の瞬間芸』で勝負するしかないのが実情です。(月では目前を悠々と通り過ぎていく地形がまるで月周回衛星の窓から眺める光景のようで結構楽しめるのですけれどもネ!)
20cm・F10のドブ鏡筒です
そこで何とか赤道儀化したいのですが、重量と長さが半端ではないので普通のドイツ式赤道儀に同架するのはちょっと無理そう。仮に赤道儀化したとしても接眼部へのアクセスだってままならないはずです。
そんなわけでミラー導光式赤道儀を考えてみることにしました。
ミラー導光式といえば2枚の平面鏡で自由自在に星を追尾できるシーロスタットが知られていますが、ただでさえ高精度平面研磨が困難な大型平面鏡を2枚も必要とするこの方式はアマチュアの追尾システムとしてはちょっと自作困難??なように思えます。
それではということでチャレンジすることにしたのが極軸上に設置した1枚の平面鏡で星を追尾する方式、『ポーラースタット』です。(ポーラースタットという単語が存在するかどうかは判りませんが、私のイメージではこの表現が最適なのです)
ポーラースタットは望遠鏡の光軸を天の北極に合わせて、極軸に沿って自転速度で回転する平面鏡で極軸内(つまり鏡筒内)に星の光を導入する方式で、上の図のように2つの形式が考えられます。
ドブソニアンのような
角型鏡筒の
場合には鏡筒前面にあおり機構を備えた
極軸回転ミラーで恒星時駆動できるでしょう。この形式では経緯台の場合と同じように
視野内の対象は回転します。
もう一つの形式は円筒型鏡筒の場合で鏡筒ごと自転する方式です。この方式ならば前面のミラーはあおり機構だけで済み、視野の回転もありません。ただし、接眼部が自転とともに移動してしまいます。
今回はドブソニアンタイプのFS-200角型鏡筒を活かすために角型鏡筒用の方式で実現を目指します。
先ず恒星時駆動するための自転ユニットは自作コーナーでご紹介したポータブル赤道儀の1台を転用することにしました。平面鏡だけで済むポーラースタットの重量はそれほど重いものではないはずなので『ポタ赤級』の小型赤道儀で十分なはずです。
使用する平面鏡は、ずっと昔、薬剤開発の分析をしていた友人が廃棄処分になった赤外分光分析装置から取り出した『いただきもの』です。しっかりしたダイキャスト製セルに納められたミラーは22cmの平面鏡です。口径不足・薄い鏡なので今回のものでは精度は期待できません。とにかく鏡筒が固定できて恒星時追尾できれば当面の目標は達成です。
次に用意するものはポーラースタットを支持する架台です。鏡筒の先端に取り付けるミラーユニットだけならば
鏡筒に固定する方法も考えられますが、鏡筒も天の北極に向けて『固定』しなければなりません。
ドブ架台で使用していた鏡筒を"あっという間"にポーラースタットに変えてしまうには予め極軸を合わせた架台を用意しておくことが必要でしょう。せっかく軽量な赤道儀にするのですから持ち運びも考慮するとこの架台に要求されるのは、
�〃變未�
��頑丈さ
�Ａ箸瀘�ての容易さ
ということになるでしょう。
平面鏡が暫定的なものなので今回製作するポーラースタットは『検証機』という性格です。
目標が定まったところで例によって近くのDIYセンターに
材料探しに行きました。組み立ての容易さは構造の問題ですから設計で何とかなるにしても、軽量さと頑丈さは相反する課題です。
安くて丈夫な『足場パイプ』は強度的には理想的です。しかしかなりの重量になってしまいます。
そんなわけで更に探し回って、足場パイプの対抗馬を見つけました・・・。ステンレス製の『物干し竿』です。これならば『軽量さ』は理想的です。問題は強度なのですが、そもそもポーラースタットは鏡筒の半分の重量は地面が受け止めてくれるのでこちらを採用することにしました。
そして構造体の主要部分は1×4材で製作します。
上の写真はポーラースタットの極軸台です。2本のステンレス物干し竿で鏡筒を支える３つの桁を固定し、この上にドブ鏡筒を載せることにします。そして先端にミラーユニットが付きます。全長は2.6mになりました。
極軸台を36度に傾斜させるための脚は一番強度の必要な部分です。もちろん軽量さと両立させなければなりません。いろいろ迷った末、極軸台と同じ『物干し竿』をアルミパイプのジョイントでつないで上の図のような構造にすることにしました。
このアルミパイプは外径27.1mm、肉厚2.9mmの丈夫なもので、ステンレス物干し竿の内径と丁度ピッタリなんです。
確実な強度を確保するために三つ又部分は『ガレージ加藤さん』に曲げ加工とアルミ溶接していただきました。(いつも感謝しております・・・)
上の写真は仮組みしたポーラースタットです。ドブ課題から鏡筒を取り外して極軸台に乗せるだけで赤道儀化が完成です。30秒あれば『ドブソニアン←→
ポーラースタット』の載せ替えができます。
見るからに細い脚の軽量架台ですが気になっていた強度不足による振動は比較的少ないようで、検証用のシステムとしては合格点だと思います。
ところが、これで地上風景を見ると、アレレ・・・、風景がダブって見えるのです。これはおそらくミラーの表面に施された赤外光用の『増反射コーティング』が原因なのでしょう。事実、用いた平面鏡は角度によって反射光の色が変わります。(平面鏡の使われていた波長が一般的な赤外分光計の2〜25μmだとするとコーティングの厚みは数μm以上あるはずです)
先にも書きましたがミラーの直径も不足していますし、コーティングの問題も出てきて、今回のポーラースタット検証機ではどうもまともな星像や惑星像が見られる赤道儀にはらなかったようです。
でもこれは完成形への第一歩、最終的には220*320mm程度で1/20λクラスの平面ミラーを使えば問題が解決することは判っています。今回のものは追尾特性や対象の導入方法を検討することが主な目的なのです。
そんなわけで、検証用のポーラースタットは完成しまして、透明ニス塗装と必要な部分に黒色塗装を施しました。
そして、例によってロゴも入れました。Polatstatt Conceptという名前です。正式には『FS-PolarstattConcept』かな?
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20cm・F10のドブ鏡筒です
