土星は惑星写真としては難しい対象です。それは、視直径のわりに暗い対象だからだと思い
ます。実際にデジカメをISO感度400相当の設定にしてFS-160(16cm・F6.3)にRadian
3mmの接眼鏡で333倍に拡大した画像を撮影しようとすると適正露出は2〜3秒にもなります。
しかも、露出不足ではC環のような比較的淡い部分の描写が上手くなく、露出過剰では本体の縞がつぶれてしまう傾向が強く出ます。
300倍以上の強拡大で3秒も露出をするのですから気流の安定度が結果を大きく左右することはいうまでもありません。
そのようなわけでバカチョンデジカメで初めて土星に望んだ私にとって良い土星像を得るためにはある程度の試行錯誤が必要でした。
加藤さんから「今夜は気流の状態が良い」という連絡を受けてからFSシステムを組み立て
てようやくの思いで撮影したのがこの画像でした。FS-160にRadian
3mmの組み合わせでFX4800Zを使って土星を撮影する場合、モニタではほとんど土星像を確認することができないくらいに『淡い』イメージしか見えま
せん。(デジカメの視野に導入することさえ難しいのです)
それでも精一杯モニタ上でのピント出しをして納得の行くところまで追い込んで撮影を開始しました。
ところが、FX4800Zデジカメのマニュアル露出は最長1/4秒まで、これでは本体とB環しか写りません。そこで思い切ってナイトモードの3秒露出で
ようやく到着したのが10/19の火星画像でした。一応、これでも『天文年鑑』の土星ページに掲載されているスケッチの内容はほぼ全て判定できますので、
16cmニュートン反射としてはまずまずの画像だと思いました。
しかし、もう少しシャープな画像が欲しくなっていました。
そんな中で12/23に再びチャンスが巡ってきました。抜群に気流が良かったのです。そ
こで土星に再挑戦、岐阜のKさんから教えていただいた『秘伝のピント合わせ方法』も併用して少枚数撮影した中から選んだ4フレームをコンポジットして得ら
れたのが22:50の画像でした。
そして更にもう一度ピント合わせを行って40枚ほど撮影してその中から選んだ17フレームをコンポジットしたものが23:00の画像です。
今回の土星撮影でもカメラの設定はナイトモードに固定して、3秒露出、筒先『うちわ』シャッターで1.5〜2.5秒の画像を50枚ほど撮影してその中か
らベストに近い17フレームをコンポジットしました。
コンポジットに用いているソフトはRegistaxですが、コンポジット後に弱いウェーブレット処理を施しています。
この画像はカッシーニ完全一周、輪の輝度とA・B・C環、輪の上の放射状構造体?、輪の上の本体の影、本
体の縞模様5本以上、***、16cmニュートン反射で得られた画像としてはかなり良い部類に入ると思われます。
これは2004/03/28の土星です。前回の土星はほぼ衝の位置での撮影でしたから輪の上の土星本体の影はほとんど本体と重なっていてまるで『富士山
の影』のように見えていましたが、3ヶ月経つとずいぶん移動しているのが判りますね。
この日は上空の気流は安定していたのですが、風が強く、FS2.0赤道儀と言えども振動が気になって苦しい撮影でした。
土星の季節はまだまだ続きますので今後も気流の良い日にトライを続けていくつもりです。