H−UA 打ち上げの見学

世界的に見ても大型の部類に属するH−UA・・・、機会があったら是非見たかった
ロケットです。
そんなH−UAの見学チャンスが14号機で訪れました。14号機『きずな』の打ち
上げです。
『きずな』は超高速インターネット通信を静止衛星を使って実現しようという試験衛星
です。
インターネットはPCとネット回線さえ確保すれば世界中にアクセス可能ですから地
域格差を低減する非常に良い手段なのですが、PCはまだしもネット回線の面では100%満足できる環境が全国どこでも確保できるとは限られないところが
ちょっと問題・・・。
『きずな』は静止軌道上で中継点を確保するという意欲的な試みです。確かに衛星軌
道からならば『死角』は少ないですよね。
打ち上げ予定日は2008年2月15日(金)、仕事の関係で丁度九州にいるときで
す。九州の仕事ではほとんど休む暇がないのでここは一番『年休』を取得して種子島行きの航空便の席を確保、15日朝の種子島行き便と17日午後の鹿児島へ
戻る便です。
ところが、2月5日から連続した強行軍の出張のせいか11日以降強烈な『風邪引き
状態』になってしまい、発熱と血圧の低下で無理が利かなくなってしまいました。そんな訳で15日の種子島はNG・・・と諦めました。
しかし、JAXAのページを確認したらH−UAも体調不良(2段目ラスタの不
調??)で打ち上げ延期に。
次回打ち上げ予定(計画日程)は2/23(土)、私は2/24夜までには熊本県か
ら三重県の鈴鹿まで移動しなければならないし、JALの予約状況を調べたら23日も24日も往復満席だし、『ああ、今回は無理・・・』と、ここでも諦めま
した。
2/22は体調もかなり回復して普通に仕事、22時頃に家に戻ってJALの予約
ページを見たら何と23日早朝便に空き席が1席!!、帰りは・・・、24日は空きがなし、でも23日の最終便(18:05)ならば空きが1席。これはもう
取るしかありません!!
この時点ではロケットの発射時間が遅れたら射点付近での見学はできないことになり
ます。『まあ発射のときに種子島に居られれば良しとするか・・・』こんな感じで今回の見学行が始まりました。
23時過ぎに飛行機の予約が完了、種子島に行くとなったら大急ぎで23日に予定し
ていた仕事を片付けなければなりません。それに鈴鹿で行う1週間の実験に対応する出張準備も・・・。全ての準備が終わったのは23日の3時頃で、5時半ま
で仮眠を取って鹿児島空港に向かいました。
鹿児島空港では真っ先に予約カウンターに向かい24日の種子島〜鹿児島便に空きが
ないか確認したらこれもラッキー!! 1席空席がありましたのですぐに予約変更。これで発射時間が遅れても射点付近での見学はできますが、まだ『足』と
『宿』が確保できていないのです。
これは『種子島に行ってしまえばなんとかなるさ・・・』という軽い気持ちで先に進
むことにしました。
鹿児島〜種子島便はDHC8−400というターボプロップ機(ジェットエンジンで
プロペラを廻す推進装置の高翼機)です。半年ほど前に高知空港で着陸
時に前脚が出なくなった機と同じ型式の機体です。大型ジェット機が鈍重なバスに乗って
いる印象なのに比べてこの機は正にスポーツカーそのものの加速や上昇性能、飛行速度が楽しめますし、何より機内と機外が凄く近く感じるので私はこの機が大
好きです。種子島には僅かに30分で到着となります。
種子島に着いてまずしなければならないことはレンタカーを借りることです。もちろ
ん予約はなしです。キャンセルした15日の時は空きを探すのに苦労したのでちょっと心配だったのですが今回は難なくOK。これで『足』は確保、最悪の場合
は一夜の宿としても何とかなるでしょう・・・。
次にやることは見学のサイトを探すことです。公式にはJAXAが推奨する3つの公
園が
ありますがそれらはどれも射点から6Kmほど離れた場所で、本来ならば立ち入り規制区域の3Kmにギリギリ近い場所を確保したいところです。候補は平
山地区付近・・・。
いろいろ探しまわって平山の漁港あたりにしようと思っていたところにロケット仲間
の方から
電話がありました。仲間の皆さんが平山にいるとのこと。早速場所を確認して合流することに・・・。
案内された見学場所は射点から3Kmの断崖上、射点もH−UAロケット全体も全て
『丸見え』の素晴らしい場所です。でも折からのスーパー低気圧の影響で風がもの凄く強い・・・・、平均風速16m/sec以上、この状態で打ち上げられる
のでしょうか・・・。
発射予定の時間を過ぎても発射の気配はありません、どうもカウントダウンは風
の影響を考慮して一時中断されたようです。海岸段丘の上に立っているためか
体感的な風速は20m/secを超えているようで打ち上げが延期されないかとても不安です。
それでもカウントダウンが再開されましたが発射時間直前にまた中断、後で判ったのですがこの時は警戒水域に漁船が入ったためだったようです。
結局17時55分発射予定でカウントダウンが再開、でもこれって本
当にこの日の最後のチャンスだったのです。
風は相変わらず強いものの、発射15分前あたりからロケットの周辺で放水が始まりました。『この風で大丈夫だろうか・・・』という不安と『自分の目の前
で発射して欲しい』という身勝手な願望の交錯する中でハイビジョンビデオカメラのSD-1と28-300mmズームを付けたCANON
40Dをスタンバイしました。発射3分前に打ち上げ決行の花火が上がって私も頭の中でカウントダウンを開始・・・『カウントが150になったら全てのシス
テムをonに!!』・・・と、いつもの撮影手順を確認して待ちました。
この季節、18時近くということは既に夕闇が迫る時間です。カウントしながら急遽40Dの絞りを2段開けることに・・・。
私のカウントは180を超え、発射台下部には水幕が立ちましたがロケットには火が入りませ
ん。『私のカウントが早すぎた??』、そんなことが頭をよぎっ
た瞬間に発射台の1点が明るく輝き始めました。ここからは無心でシャッターを押し続けること以外ありません。やがてH−UAの轟音が私たちの台地にも届き、H−UAはゆっくりと、しかし急速に速度を増しながら軌道に向かって上昇を開始しました。
世界でも大型ロケットの部類に入るH−UA、そのリフトオフは想像
以上に堂々たるもので『感激』以外のなにものもありません。上空の雲にその姿が消えた後もしばし頭の中にはあの光と音以外のものは残っていませんでした。
宿は・・・前出のロケット仲間が宿泊する南海荘にねじ込んでもらえることになって、これまたラッキー。種子島名産の巨大伊勢海老汁を堪能、これは本当に
美味しかったです。(ロケット仲間の皆さんと南海荘のご主人さんに感謝!!)
食後はロケット関係者さんも交えて皆さんの楽しく豊富なロケット談義に参加させていただきました。

翌日の2/24は15:05の鹿児島便なのでそれまでは時間がありました。南海荘
宿泊の皆さんは宇宙センターに行くとのことで私も同行させていただくこ
とにしました。
途中、昨日は交通規制されていた種子島宇宙センター内の道を走り、Nロケット発射
台のすぐ傍の展望台に行ったり、H−UA

ロ
ケットの移動が全て見られる場所を見たりしながら展示施設に行きました。
そこには巨大な広場に横たわるH−UAや施設の入り口に聳え立つN
ロケットの実物大模型など日本のロケットの大きさを実感できる展示物がたくさんありました。施設内のロケット資料などと合わせて本来だったら丸々一日かけ
てじっくりと見学したい盛りだくさんの内容だと思いましたが、あぁ・・・飛行機の時間が・・・。
ということで、空港まで見送りに来てくださったロケット仲間の皆さんとお別れして鹿児島に戻りました。で、その後の鈴鹿へのルートなのですが、こちらの
方は予約を取っていなくて・・・鹿児島空港でびっくり!!。
ロケット打ち上げのせいか名古屋便は満席、大阪便も満席の状態で一瞬途方にくれましたが、結局、中部国際空港便と大阪伊丹便を平行に空席待ちをして最終
の伊丹便をゲット、伊丹→(バス)→難波→(JR)→天王寺→(近鉄)→鈴鹿というルートで真夜中に鈴鹿に到着することができました。