『内之浦へ』 S-520-23打ち上げ見学
ロケット・・・それは私たちの思いを宇宙に運んでくれる乗り物であるとともに 宇宙を身近にしてくれる夢の乗り物です。
私は過去のある時期に自作のロケットを作って飛ばしていたことがありまして・・・特別な思いがあります。
そんな折、昨年10月から仕事の関係で熊本県の南部の町での仕事が増えました。内之浦までは約200Km、
日帰りで往復できない距離ではありません。何とか良い機会はないかと思っていた矢先、ISASのHPで観測用ロケットS-520型23号機の打ち上げの予 定を見つけました。
23 号機
の 観測目的は250Km、200Km、150Kmの
高層電離層
でリチウムを散布して超高層大気の様子を観測することです。リチウムの励起は太 陽光が担いますが昼間では発光を観測できないので打ち上げは日没直後になります。打ち上げ予定が土日!!ということもあって、これを逃す手はもちろんあり ません。
そんな訳で行ってきました、『内之浦』。それでは、ご報告をさせていただきます。
往きは垂水市経由、桜島の雄姿です 桜島の麓の『道の駅』にて、温泉でゆったり
内之浦町の橋の欄干にあった『おおすみ』 内之浦宇宙空間観測所の入り口看板・・・
内之浦のJAXAの宇宙空間観測所前に到着したのが15時ちょっと過ぎ、実はこの日はロケット打ち上げのため施設内の見学は15時までで終了していまし た・・・残念!!
でも、資料館の中を見ることができました。
固体ロケットは『日本の誇り』です・・・ 固体ロケットの推薬、推力調整の内側形状
固体ロケットのスカートと尾翼部分 S型ロケットの観測機器搭載部分
Mシリーズのモーターと姿勢制御装置 M型(右)とS型(左)用のラウンチャー
M型のラウンチ、垂直リフトオフですね S型のラウンチ、こちらは小ぶりです
資料館から出て近くのロケハンをしました。JAXAゲートから南に2本目の橋の脇の車止めス ペースで打ち上げの見学をすることにしました。未だ打ち上げまで2時間半位あるので先約は1組だけ・・・私は一番良い場所に車を止めて地図や双眼鏡などを 出しました。
そのうちに何組か集まり始めて、たまたま隣に駐車された星好きのAHさん(鹿屋市在住とのこと)と鹿児島や離島の話をしながら待つことに・・・。
AHさん、いろいろ情報をありがとうございました
さて、いよいよ打ち上げの時間が近づきました。私はCanon 20DにSigma 28-300mmレンズを付けて三脚にセット。暗くなるにつれ、シャッター速度をどうしようとか・・・多少一発勝負の不安と迷いを感じながらも、いつもの 調子で「エィ、これでいいや」と条件決定!! でも、いざ撮影を始めたらどんどん条件を変えていくんです。
空は・・・、ほとんど雲もなく、最高の観測ができそうです。
そうこうしているうちに発射3分前の花火が打ちあがって、いよいよ心の中で『1、2、3、・・・』、180が近づくに連れてシャッターに置いた指に力が 入ってきます。
と、トーチカのようなS型ラウンチの内側が明るくなってロケットが飛び出しました。
飛翔を開始した23号機・・・美しい・・・ このあたりでようやくロケットの轟音が
30秒少々で燃焼終了、慣性飛行に移行です 燃焼煙はロケットの回転と上空の風を反映
私は自作以外のロケットの打ち上げを見るのは初めてだったのですが、いや素晴らし い・・・。ヤミツキになりそうです。打ち上げ直後の2枚は打ち上げの臨場感を撮影するために1/30秒露出、次の2枚は
飛翔経路
を 映すために20秒露出です。
ロケットは300Km以上の上空まで上昇し、その後
放物線経路で慣 性飛行
を始めます。250Kmまで落下したところで1回目のリチウム 放出をすることになっ ています。
突然、上空に赤い光が発生しました。薄明の残るバックグラウンドに実に美しい赤色の光です。何回の放出が行われたのか判りませんがかなり短時間で19: 26:43秒のような形の発光になりました。(少なくとも2回の放出でできた形??)
まるで宇宙空間に浮かぶ熱気球のような幻想的な形と色をしています。
発光直後のリチウム雲 (20秒露出) 少し拡散肥大が進みました (10秒露出)
形はどんどん変化します 宇宙空間の平均自由行程はやはり大きい・・・のかな
19:31:55の写真は光が淡くなってきたので30秒露出、移動を開始した車のライトが・・・
という訳で今回のロケット打ち上げとリチウム発光雲を無事見学することができまし た。
ところで、『星好き』の一人としては内之浦の空の状態が気になります。はくちょう座付近の天の川の明暗は明瞭に見えます。久々に完璧なコールサックを見 ました。
いて座の天の川は輝いています。よくオーストラリアで見る銀河中心は星明りを感じると言われますが、内之浦の天の川もそれに近い印象です。
周囲に大きな町がなく、東と南が海という絶好の地理条件に恵まれた内之浦の空は・・・私が過去に見た星空の中でも最高のものでした。
薄明の中でも天の川や干潟星雲、三裂星雲が写ります・・・28mm、F5.6露出30秒・・・凄い!!
下方通過に向かう北斗七星、これも楽々、縮小した写真でごめんなさい 露出30秒
カシオペア、この後薄明の終わった空を見てから帰途に着きましたが天の川が眩しかったです