これまで惑星撮影に用いてきたバカチョンデジカメのFuji Finepix 4800Zに限界を感じてレンズ交換式一眼レフデジカメを購入しました。

 購入に当たっては、

1. できる限り天体用として適性の高い製品を選択する
2. 手持ち資金の限界・・・(これが一番問題なんです)

3. これまでの銀塩一眼レフで収集したレンズ資産を活かすか否か

という観点であれこれとカメラのカタログを収集しました。

 検討線上に登場したカメラはNIKONのD70とD100、PENTAXのIstDs、OlimpusのE-300、Canonの EOSkissDと20Dの6種類でした。これらの中でNIKONとPENTAXは私が持っている過去のレンズの資産を活かせることがメリットです。
 カタログや一眼レフデジカメ記事の掲載された天文誌などを比較検討した結果、ノーマル状態でもHαに対する透過特性が比較的良いCANONの製品にする ことにして、最終的にはミラーアップ機能やその他の天体用として使い勝手の良さそうな機能の多い20Dを選定しました。

 しかし、私はこれまでCANONを使ったことがないので交換レンズの『含み資産』もありませんし、20Dは人気商品でどこのカメラ屋さんでも値引率が一 番低くて6機種の中では最も購入価格は高くなってしまいます。でも、そこはそれ、清水の舞台から飛び降りる気持ちで『初志貫徹』することに・・・。
 結局、20D本体にEF-S 18-55mm標準ズームの付いたセットとリモートレリーズを購入しました。

 購入したCANON 20Dとリモートスイッチ

 これで一応35mmフィルムで28-85mm相当の写真が撮れる状況になりましたが、もう一つの趣味、テニスの方ではちょっと長さ不足・・・、そこで思 い切って大ズーム比のレンズも購入することにしました。
 既に18-55mmはありますができるならば付けっぱなしの1本で・・・と考えると28-200mmか28-300mmの標準ズームが良さそうに思い、 調査を開始。タムロンとシグマから比較的安価でSLDレンズや非球面レンズをふんだんに使った標準ズームの出ていることが判りました。


 調べていてちょっと驚いたのは・・・、下の写真のシグマの標準ズーム2本なのですけれど、 どちらが高いと思います??

 シグマのカタログのズーム2本

 実は、上のズーム(Compact Hyperzoom 28-200)は非球面レンズ2枚使用で定価が53,000円、下のズーム(28-300mm)はSLDレンズ2枚と非球面レンズ4枚使用で定価は 45,000円!!、実売価格はもちろん28-300の方が倍くらい高いのです。
 28-200mmは旅行かばんに入れて持ち運べるコンパクトズームという『謳い文句』でカメラ量販店のオリジナルセットになっているズームレンズのよう ですが・・・これって値引率を強調するための『見せ球』??



 とりあえず、シグマとタムロンのSLD+非球面レンズを存分に使った28-300mmを比較して、前群(対物)と中群(テレタイプ)の部分にSLDレン ズを配置した(2群4枚のペッツファール型望遠鏡の前・後群2枚の凸レンズそれぞれが全部SLDガラス
という仕様と 似てる!!)シグマの28-300mmを購入しました。

 シグマのカタログに掲載されたレンズ構成図
 
 

 20Dに28-300標準ズームを取り付けたところ

 実際に20Dに取り付けてみると、オリジナルのEF-S 18-55mmズームとそれほど大きさが変わるわけではないほどコンパクトなサイズでオドロキです。


 さて、天体用ではない用途で購入した標準ズームレンズですが、やはり天体用としての適性も調べてみたくなってしまいますよね。

 EF-S 18-55mm(18mm)で撮影した水星と金星(開放、3秒)

 実際、12/30の早朝にEF-S 18-55mmを用いて自宅バルコニーで撮影した明け方の水星と金星のフレームを調べると星像はきちんと締まっていてかなり期待できそうな感じなのです。


 そこでマックホルツ彗星の撮影を兼ねてEF-S 18-55mm、Sigma28-300mm、それに銀塩を使わなくなってから使用頻度の低下していたFCT-65(+Reducer):240mmの比 較撮影を行うことにしました。

 
撮影場所は光害の戸田市でというわけにはいかないので、1/7に狭山湖の北岸で、1/9には秩父星の里で撮影を試 みました。

 下の写真はレンズ特性の把握用にSigma28-300mmズームで撮影したM42です。サイズダウンの際に星が消えてしまうのを防ぐ目的で resampleモードで縮小しました。それでも広角側の写真では微光星の表現が悪く(バックグラウンドに滲んでしまう)なっていますが、レンズ特性のご 参考にしていただければ・・・。

 

 

 記載のズームリング位置にて撮影(開放、60秒)

 この撮影で判ったことは、星の締まり具合はまずまずで、3504*2336ピクセルのフォーマットを1200*800程度のフォーマットまで縮小すると それなりに実用的なレベルになること、色収差の補正は極めて良くできていることでした。一連の写真でお判りのように、300mmの望遠側でも輝星の周りに 青滲みや赤滲みを感じることはできないのです。
 ただ、ピント位置は無限端よりも若干内側にあるようで、合焦には気を遣いそうです。


   彗星拡大(開放、60秒)

 上の写真はCANON純正ズームのEF-S 18-55mmの50mm位置で撮影した写真と彗星部分を切り取り拡大したものです。このレンズはED系ではないので若干の青にじみが見えますが極僅かの レベルで簡単な星景写真用としては十分使えると思われます。

   彗星拡大(開放、60秒)

 上の写真はSigma 28-300mmの100mm位置で撮影したスバルと彗星です。この場所ではこれ以上の露出は難しいですが、もっと空の暗い場所で露出時間をかけてみたく なるような
感じです。

 FCT-65+Reducer (fl=240mm、30秒)

 さて、この日最後の写真は高橋製作所が僅かな期間製品として世に出したフローライト・トリプレット・アポ、FCT-65による写真です。当時、さすがに FCTシリーズの中でもずば抜けていると感じて購入したフローライトの写真専用鏡だけあって色収差補正もコントラストも優れています。

 レンズ交換式一眼レフデジカメの性能が銀塩と同等になったことの恩恵は、一時的に活躍の場を失っていたFCT-65やイプシロン、ライトシュミットのよ うな(超級)星野写真機材が再び活躍の場を得たということなのではないでしょうか・・・。


 以下はこれまで説明したような結果に少し気をよくして1/9に残雪の残る秩父星の里まで出かけて撮影してきたマックホルツ彗星とM42です。

 Sigma28-300(300) のM42、流れてしまいましたが(開放、180秒)

 FCT-65+Reducer のM42 (fl=240mm、180秒)

 FCT-65+Reducer のマックホルツ彗星 (fl=240mm、180秒)

 1/9、
マックホルツ彗星とすばるの競 演はFCT-65の写野から外れてしまいましたが、バックグラウンドの暗い場所でそれなりの露光時間を掛けた写真を 撮影することができたのは幸いでした。


 リポートの最後に・・・、SLDや非球面のレンズを使っているとはいえ、大ズーム比の標準ズームレンズで高性能写真鏡と 同等の星野写真が撮影できるとは期待していません。

 しかし今回のテスト撮影で判ったことは、『大ズーム比の標準ズームレンズ、侮るなかれ』ということでした。

 銀塩に肩を並べた一眼レフデジカメにこのようなレンズ1本だけ付けておけば、やや広角(35mmフィルムで45mm相当)〜超望遠(480mm相当)の 一般風景撮影は完璧にこなし、星野写真も一応全域でOKという性能、それでいてシグマもタムロンも30,000円ちょっとで新品を購入可能という実勢価 格・・・、これは凄いことだと思いませんか???



 追記

 1/9にSigma28-300のfl=100mm位置で撮影したマックホルツ彗星とスバルの写真をご参考までに掲載します。

 Sigma 28-300 (100mm) F5.6 ISO400相当 露出180秒

 画像クリックで20Dフルサイズの画像(JPEG強圧縮ですが)をご覧いただけます。